コーチング武器に起業会話を通じて相手の能力を引き出す人材開発技術「コーチング」を武器に、起業する人が増えている。競争の激しいビジネス社会を生き抜くため、自らに磨きをかける手段として、コーチングへの関心が高まっているためだ。電話1本で開業できる手軽さも背景にあるようだ。 (藤田桂子) ![]() 中小企業の経営者と面談する上船さん。的確な質問に、話が弾む(大阪市内で) コーチングの基本は、問題解決の答えは本人の中にあるという考え方で、1990年代にアメリカで広まった。プロのコーチは、相手の個性に応じて聞き方を工夫することで、答えを導く技術を身に着けている。 神戸市内の自宅で今年7月、コーチング事務所「メンタルチャージ ラボ」を開いた岡本文宏さん(39)は、サラリーマンや個人経営者計14人、小売業1社と契約している。 1人につき30分、1か月に2〜4回の割合で電話する。「売り上げが増えない」「転職しようか迷っている」など、1人では解決しにくい悩みを抱える人に、会話を通して自ら考えをまとめ、実行すべきことに気付かせる手助けをしていく。 岡本さんは98年、7年半勤めた婦人服メーカーを辞め、コンビニエンスストアの店長に転身した。4年後、売上高の低迷に悩み、あるマーケティング専門家に相談したところ、多くのことに気付かされた。この専門家は、一方的に教えるのではなく、いくつもの質問を投げかけたのだ。「何を売りたいのですか」「どうやって売っているのですか」――。これが、実はコーチングだった。 岡本さんは答えとして、独自の商品説明札や、会員組織作りを考えて固定客を増やし、前年比10%台の売り上げ増を達成した。この体験でコーチングに目覚め、専門教育機関のカリキュラムを受けて人材教育会社に転職、9か月後に独立を果たした。 中小企業に的を絞り、「小さな会社の社長さんの社外相談役」を名乗るのは、C&Cマネジメント(大阪市)代表の上船美和さん(40)だ。中小企業診断士の資格も持ち、2002年4月に起業した。 「経営指導でなく、考えるお手伝いをする。しかも、耳を傾けるだけではなく、積極的に提案もします」と、コーチングとコンサルタントの融合を実践する。 コーチングを受けている40歳代の経営者は「うちは4人の会社なので、話を聞いてもらえるのがありがたい」と喜ぶ。上船さんは「私が投げかけた質問で、頭の中でピカッとひらめいたような表情をされる時が、一番うれしい」と話す。 顧客探す営業力必要コーチングの有資格者らで作る日本コーチ協会(東京)の調査によると、01年にコーチが本業と回答した人は18%、副業は33%だった。これが04年には本業27%、副業28%となった。定年や結婚・出産で会社を辞めた人たちが、キャリアを生かして開業しているとみられる。 同協会の桜井一紀専務理事(47)は「上司の言うことを、そつなくこなしていれば良い時代ではなくなった。厳しい競争に勝ち抜くため、会社でも上司でもなく、支援してくれる人を求めていることが背景にある」と分析する。 優秀なコーチは順番待ちというが、同協会の04年の調査では、有料の顧客を持つコーチ127人の平均月収は25万4000円、月収50万円以上は15%だった。桜井専務理事は「プロのコーチとして独り立ちするには、専門的な技術の上に、顧客を見つける営業力が必要だ」と指摘している。 経済部から新聞社内の管理職研修で、コーチングを習ったことがあります。部下の話に耳を傾け、「ではどうしたらいいのだろう」と問いかける。答えが返ってきたら、頭ごなしの批判は避け、まず「それはいい考えだ」と褒め、さらにいい考えを引き出していく、というものでした。 厳しく教育された自分の新人時代と比べると、新聞社も変わったものです。さっそく実践に移しましたが、根が短気なもので、どこまでできているものか。「デスク、変わりましたね」という部員からのお褒めの言葉は、まだありません。 (上) (2005年10月16日 読売新聞) |
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