顧客生涯価値を高める経営
経営者が逮捕され、有罪判決を受けたライブドア。
今では上場廃止になっていますが、事件直後には、株式の売りが急増し
一時株価は、100円を割るところまで急落しました。
売り注文があまりに多すぎ、東京証券取引所のシステムがパンクしたほどでした。
それほど大量の売りを浴びせた株主の多くは、個人投資家たちです。
個人投資家たちは、我先にと、「ライブドア株」という
沈みゆく船からの脱出を図ったわけです。
一方、ライブドアの主要サービスの1つ「livedoor blog」は
その後もサービスを提供し続けています。
ブログ開設者(ブロガー)の中には、事件を契機に他社へ移行した人もいるようですが
多くのブロガーはそのままにしています。
何かあるとすぐ、もっている株を売ってしまう個人投資家と違って
ライブドアのサーバーに、ブログを開設してしまった人たちは
イヤになったからといって、簡単に他社に乗り換えられません。
URLは変わってしまうだろうし、前のデータの移行も
簡単にはできません。
検索エンジンにも、以前より引っかかりにくくなるでしょう。
何より、これまで読みにきてくれた人たちに
迷惑をかけることになります。
そして何より、会社がどんな会社であろうと、
ブログの使い勝手やデザインなどは
結構気に入って、使い続けている人が多いのです。
事件前、ライブドアは、ブログの開設者数1位でした。
それだけ多くの人が見に来るわけで、
多くの広告収入が見込めたはずです。
広告があまり取れなかったのは、ライブドアでは
アダルト系のブログを許容しており
それをイメージ重視の広告主が嫌ったという説があります。
「数は力」とばかりに、開設者増加に走るのではなく
こういう声を聞いてアダルト系を排除し、良質な書き手を集めておれば
広告収入で稼ぐという、他のインターネット企業がやっている
まっとうな戦略を
描けたかもしれません。
また、アクセス数やリンク元、検索語が見られる
有料のブログ「livedoor blog PRO」は
月額262円(税込)ですが、開設者数が多ければ
「ちりも積もれば」です。
バカにならない収益を生み出しているはずです。
もちろん、
堀江元社長がめざしていた何千億円というケタから見ると
取るに足らない金額でしょうが。
本当は、こういう、小さいけど、安定したお客さんを、
まず一番に大事にして
経営していくべきでした。
堀江氏が間違ってしまったのは、
経営の目的からして、間違っていたからだと思います。
利益や見た目の会社の大きさ(株式時価総額)を目的にし、
そのために
株価を上げることを目標にしてしまったのです。
そうじゃなくて、ナンバーワンの商品・事業を作り
お客さんの数を維持拡大することを目的にしていれば
開設者数でナンバーワンを取ったブログという商品を起点に
徐々に1位の商品を増やしていくということをしたし、できたはずです。
短期的な売買を繰り返す個人投資家がもたらすお金は、
短期的には
巨万の富を生むでしょう。
しかし、この人たちは、簡単に株を売ってしまう
「浮気者」です。
それに対して、月数百円の利用しかしないユーザーは、
短期的には
わずかな収益しかもたらしてくれません。
でも1人が、何年も何年も使い続けてくれれば、
合計すると
かなりのお金をくれることになるわけです。
これが「顧客生涯価値」という考え方です。
1人1人、1社1社のお客さんを大事にする、ってことですね。
そして、ここが重要なのですが、
お客さんを束でとらえるのではなく
お客さん1人1人、1社1社を見る
というのは、私たち小さな会社の得意なことです。
逆にいうと、大手企業のマネをして、
お客さんを束でとらえたら
大手と同じ土俵で戦うことになるので、
必ず負けるということになります。
たとえば、たいした数のお客さんがいるわけでもないのに
社員にお客さんの名前を覚えさせることを怠り、大手企業の受付のような
礼儀正しくはあるけれど事務的で冷たい受け答えを、させてませんか?
さて、ライブドアです。
せっかく、ブログで1位という地位を獲得したのに、
これからどうなるのでしょうか?
ブログサービス比較サイトブログファンによると
事件後
livedoor blogの「アクティブユーザー数」
(開設者のうち、実際に更新をしている数)は
ジリジリと下がり、2007年3月現在、アクティブユーザー数1位の座を
「FC2ブログ」に明け渡しています。
ブログのサービス内容自体はいいと思うので、
新経営陣や社員さんには
普通の会社として、
地道に、まっとうに、がんばって欲しいものです。
※顧客生涯価値(LTV / lifetime value / CLV / customer lifetime value)
1人(1社)の顧客が取引を始めてから終わりまでの期間(顧客
ライフサイクル)を通じて、その顧客が企業やブランドにもたら
す損益を累計して算出した指標。
(情報マネジメント用語辞典より)