戦略的コーチ変更で、金メダル


弊社のメイン事業は、小さな会社の経営者と1対1で経営について考え話し合う
「経営コーチング」です。
電話で30分×月3回か4回、またはオフィスにお越しいただいて1時間×月2回
1対1で、経営ミーティングをするというものです。

私がすることはコーチングの3つのスキル(技術)「聴く」、「質問する」、「伝える」
特に「伝える」の1つである「アドバイス・意見」、「提案」
経営コンサルタントの視点からも言うことができるというのが
弊社の特徴といえます。

しかしどんなときも、コーチのスタンスである

を、忘れないようにしています。

経営コーチング以外に、経営コンサルティングもおこなっています。
が、相手が3人とか4人とか、複数になるだけで、実は そこで使っているスキルは
コーチングとほぼ同じ。
「聴く」、「質問する」、「伝える(アドバイス・意見や提案をいう)」です。
これらに、メンバー間で理解や意識の統一を図るためホワイトボードに「見える化」し
まとめを報告書としてフィードバックするという作業が加わるだけです。

スタンスも当然、コーチのスタンスと同様です。
私は「ああしなさい」と上からものを言うようなことはしないし
メンバーたちが自らで答えを導き出せ、実行できることを信じています。

コンサルティングを依頼いただいたC社。
コンサルティングテーマは、受発注の業務改善です。

月に1〜2度、2時間程度のミーティングを、社長、取締役でもある社長夫人
社員代表3人、私の6人でおこないます。
社員代表は営業担当2人とサービス担当1人で、いずれも30代で
今の現場がよく分かっており「将来は幹部に」と期待されている人たちです。

社長と私はもともと知り合いなのですが、私が昔、食品卸会社で
受発注業務を担当していたことを知った社長が
「受発注業務で混乱が起きているので会社に来て相談を」と
持ちかけられたのがきっかけで、コンサルティングをすることになりました。

しかし、あとから分かったのですが、私が依頼されたのには
「受発注業務の経験があるから」だけでなく別の理由があったのです。

社長と社長夫人と私の3人で話をしていたときのことです。
夫人は私にコンサルティングを依頼した理由を
「氷の上に立ってくれる人を求めていたから」と表現しました。
荒川静香選手がテレビでのインタビューで、そういうコーチをつけたから
金メダルをとれたと言っているのを聞き「これや!」と思った、というのです。

それまで荒川選手のコーチ(当時)、ニコライ・モロゾフさんのことは
あまり知らなかったのですが、それを機会に調べてみました。

そして分かったのです。
モロゾフコーチが、上述のコーチの3つのスタンスを全てもっていること。
そして、荒川選手は、金メダルを獲るための戦略の一環として
前の人からモロゾフさんに、コーチを変更したということを。

日本のスケート連盟は、子どものときから英才教育を行い
強化選手には海外有力コーチを選んで指導を受けさせています。
そのシステムにより、近年、世界トップ10の中に日本人選手が何人も
入れるようになりました。

しかし荒川選手は、それではドングリの背比べから抜け出せないと悟ったのです。
彼女が世界選手権で優勝したあと、急速に台頭してきたのが
10代の浅田真央選手や安藤美姫選手。

体力では10代の選手や外国人にかなわない彼女が、再びナンバーワンになるには
ジャンプという同じ土俵でより高く多く飛ぶ方向ではなく
オンリーワンの技=イナバウアーを磨き、彼女の個性を伸ばし
芸術性の勝負にもち込むという「戦略」が必要だったのです。

これは、小さな会社のとるべき戦略と同じです。

土俵を変え、自分の得意分野で勝てる土俵に、勝負をもち込む。
大きな儲かりそうな市場で、多くのライバルと戦うのではなく
小さい市場でいいから、自社が1位になれそうな市場を選ぶ。

もちろん、大きくて儲かりそうな市場に比べて、小さい市場での勝負には
リスクが伴います。
市場が小さいということは、お客さんが少ない、つまり「これが絶対欲しい!」と
思っているお客さんがおらず、お客さんに「欲しい」と思わせること
(ニーズの掘り起こし)からまず始めなければなりません。

「欲しい」と思っているお客さんに売るより、はるかに苦労する…。
でも、ニーズをもったお客さんがたくさんいるところには、ライバルが多く
別の点で苦労する…。 あなたならお分かりになりますよね。

荒川選手も似た状況にありました。
採点基準が変更され、ジャンプやスピンの回転数、数、高さや速さといった
数値化できる技術の合計点で採点されるようになったのです。
そのため、前のコーチのタチアナ・タラソワさんは「イナバウアー」を
ムダだと考えていました。

「基準」がそうなった以上、勝つためにはしかたなかったでしょう。
しかし同じ基準、同じ土俵で戦うと、体力で劣る彼女には不利でしかありません。

そこで荒川選手は決断をしました。
連盟のいいなりになる「お人形」をやめて自立し、自分で選んだコーチに
ついたわけです。
「チャンピオンメーカー」といわれた名コーチと決別し
若くてまだ実績の少ないコーチを選んだのです。
しかも、オリンピック直前の2005年12月に、という英断。
まさに賭けです。

でも、リスクをとることなしに、勝つことは不可能なのです。
決断をしたからこそ、勝てたのです。

彼女はインタビューに
「大きな理由は実際にリンクに立って教えてくれるかどうかだった」と答えています。

タラソワコーチは、暖かい毛皮を着て、リンクの外に立ち指導します。
人気コーチなので順番待ちやドタキャンがあり、選手が思い通りに練習できません。
荒川選手の象徴にまでなった「イナバウアー」は
採点につながらないからと封印しました。

モロゾフコーチは、スケート靴を履いてリンクに降り、すぐそばに立ってくれ
時にはジャンプなど演技の見本を見せて、指導してくれます。
「静香のイナバウアーは世界一だ」と褒め、荒川選手と話し合って
彼女ならではのその技を、オリンピックでプログラムに入れることにしました。

外から「ああしろ、こうしろ」というのではなく、中に入り一緒に考えてくれ
個人の意見を尊重し、そして時には、自分の実践経験を
モデルとして示すこともできるコーチ…。

教えに従うたけでは、トップクラスには入れても、ナンバーワンにはなれません。
よほどずば抜けた才能・資質がない限り。

最後は能力をどれだけ発揮したかで決まります。
そして能力は、型どおりにやったときより、自由に、個性を出したほうが
発揮されやすいのです。

トップ1%、ナンバーワンになるには、個性を伸ばすこと
会社でいうと、強み、オンリーワンを作ることが必要です。

トップクラスとナンバーワンを分けるもの…。
それがまず、誰かのいいなりになることや横並びをやめて自立することであり
それを決断すること。
そして、自分にとって最適なコーチをつけることです。

それはスポーツ選手だけでなく、経営でも同じではないでしょうか。

2007年3月の世界選手権では
モロゾフさんをコーチにつけた安藤美姫選手が金メダルを
高橋大輔選手が銀メダルを取り、スケートの世界では
モロゾフ流のコーチング術は勝てるということが証明されました。

あなたなら、タラソワさん、モロゾフさん、どちらをコーチに選びますか?