理念経営の世紀へ
「21世紀はこころの時代」と言われています。
物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを追求する人が増える。
モノやサービスについても、こころを幸せにしてくれるものが
受けるようになる。
経済的な成功や地位・名声を得た人よりも
人間的に魅力がある人や徳を積んだ人が尊敬されるようになる…。
そんな変化をさすのだと理解しています。
「こころ」を企業に当てはめていうと、 経営理念や経営哲学といったものになります。
「21世紀はこころの時代」を経営に当てはめると
「21世紀は理念経営の世紀」になるのではないか
と私は考えています。
一方、20世紀はというと「戦争の世紀」と言われています。
2つの大きな戦争があり、前の世紀にはありえなかった
一度に多くの命を奪う兵器が実際に使用されました。
「経営戦略」というのはその名の通り、戦争から来た言葉です。
そのほかにも、経営には戦争から生まれたものがたくさんあります。
インターネットは1969年、UCLAにルーターの元祖である
IMP(Interface Message Processor)の1号機を設置したのが
始まりとされていますが
実は、1960年代前半から
アメリカ国防総省は、従来の電話網に代わる分散型の
「核戦争にも耐えうる通信システム」の研究に着手していたのです。
これなしに生きられないぐらいの存在になったインターネットですが
本気で核戦争を想定して研究していたところにルーツがある
というのは
よく考えるとコワイ話です。
また、企業内の組織編成や部下指導育成手法も
軍隊組織をより高度化する課程で生まれたものが、結構あります。
ランチェスター法則も、イギリス人のF.W.ランチェスターが
第1次世界大戦を分析した結果から発表したものを
日本人が経営戦略に応用したのです。
「20世紀は戦争の時代」を経営に当てはめると
「20世紀は戦略経営の世紀」だったといえます。
経営学は20世紀に生まれ、発展しました。
それとともに企業経営も科学的に高度化していき
今では、戦略経営が当たり前になりました。
考えてみると、戦争に理念など要りません。
というより、そんなもの、あったらジャマにしかなりません。
戦争は、勝つか負けるかです。
「人権を守る」とか「環境を破壊しない」とか
考えてたら、戦争は成り立たないのです。
ジャマ、というと行き過ぎですが、前の世紀には、 理念なんかなくても経営できました。
稲森和夫さんの「アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役」によると
アメーバ経営はメンバーの理念の共有なしにはありえない、
ということが分かります。
逆にいうと、アメーバ経営のような独自の経営手法をとる会社や
稲森さんようなごく一部の名経営者といわれる方々だけが
哲学的境地にまで到達した経営理念をもちえました。
しかし中小企業を含むほとんどの会社はそうではなかったのです。
そんなものなくても、そこそこ儲けることができたのです。
私の知人には2代目経営者がたくさんいますが
お父さんの時代には、経営理念なんかなく
自分が理念をはじめて明文化した、という方が非常に多い。
高度成長時代には、どんどん仕事が来るわけですから
「理念なんか考えるヒマあったら、機械動かせ、お客さんのとこ行け」
が
正解だったのでしょう。
バブル期に本業そっちのけで金儲けに走った会社はつぶれ、
失われた10年が過ぎ
生き残っているのは結局、
明文化していないまでもしっかりした経営への思想
つまり
経営理念をもっている会社だったわけです。
経営の目的は金儲けではなく、
お客さんに喜んでもらうことや社会貢献だと
社内外に明確に示している会社です。
そして昨今の数え切れないほどの企業不祥事。
世間の目は、かつてないほどに
企業が「儲けているか」や
「性能のいいものを作っているか」
などではなく
「本当に客のことを第一に考えているか」や
「正しい行いをしているか」に
向けられるようになっています。
不祥事が多いからそうなったという側面もありますが
厳しい目が不祥事を放置せず白日の下にさらしたから、
発覚件数が多くなった
とも見ることができます。
「理念経営の世紀」の予兆はすでにハッキリしてきています。
お客様も、銀行も、求職者も
「その会社には経営理念があるのか。あるとしたら何をいってるのか」
を確認するようになってきている、というのがその端的な例です。
近頃、事業で大儲けして豪邸に住む人を取材するようなテレビ番組が
やたら増えているように感じられたり
「簡単に儲かる」、「短期間に1億稼いだ」といった話が、
うるさいほど聞こえてくるのは
変化の前の「混沌」だと、
私には思えるのです。
株式時価総額の極大化をめざし、時代の寵児にまでなった経営者が
粉飾決算の疑いをかけられ逮捕されたのは、
理念なき経営の「終わりの始まり」だと
私には思えるのです。
これからは、「理念ありき」で、それがなければ、
経営が成り立たない
会社が成長し安定することはできない。
そんな時代に入っていくのです。